誘拐犯は私の彼氏!?
気づいたら、僕は宙を舞っていた。
落ちていく自分が、やけに無力に思えて。
ただ握りしめた帽子が、ちゃんと僕の手の中にあることを確認できただけで。
それだけで、満足だった。
ふわふわと宙を舞うなかで、僕は恐怖を感じなかった。
僕の持っているものは、全部与えられたもの。
僕自身のものなんて、ひとつもない。
僕の代わりだって、たくさんいる。
みんなが必要なものは、僕じゃなくて「当主」。
もう、「当主」でいることに疲れたよ。