幸せタクシー
医者に渡された松葉杖を使って、受付に行く。
受付けの所で看護婦さんと、保険がどうのこうの話して、書類にサインをした。
保険のこととか分からない。とりあえず、渡された書類をお母さんに渡せば、大丈夫だって。
受付けにあった掛け時計を見ると22時半を回っていた―…。
そのまま玄関を出ると、思わずため息が漏れる。
まだ雨が降ってる…。
そう思い暗い夜の空を見上げもう一度ため息を漏らした。
風に吹かれてポタッと雨粒が頬に落ちる…―。
私―…生きてる―…。
私の代わりに誰かが死んだ…。
何で、そんな風に思ってしまったんだろう…。
ふと、目線を下ろした時、
ザアザア降る雨の中、ポツンとタクシーが一台停まっていた。
私、まだタクシー会社に電話してない…。
車のライトが点いているからエンジンはかかってるみたい…。
お母さんが呼んでおいてくれたのかな?
それとも他のお客さん待ちかな?
屋根の下を慣れない松葉杖を使いながらそのタクシーに近寄る。