ジキルハイド症候群
「風邪をひいたと言っていたが、恐らく違う。」
やれやれと大和さんは、肩を竦めた。
「蒼真、お前の気持ちもわからないでもない。だがな、恵里ちゃんには、無理なのかもしれない」
「………」
「恐らく、恵里ちゃんの近くの環境のせいだろう」
近くの環境……あの女。
俺は、拳を握りしめる。
本当、あの女は、恵里に害しか与えないらしい。
「……頼らせるのは、無理ですか」
「今はな……頼らせるより、甘やかせた方がいいかもな」
二度とお前から離れられないようにな。
ニヤリと大和さんは笑う。
甘やかせてるのはやっている。まだまだ足りない。
「……分かりました」
「あぁ、話はそれだけだ」
大和さんは、ゆっくりと車椅子を動かし始めた。