ジキルハイド症候群



「お母さんは、出勤準備した方がいいんじゃないの?」

「そうだけど………じゃあ、お願いしようかな」


お母さんは、あたしが頷くのを確認するとせっせと出勤準備を始めた。
その姿を視界の隅で捕らえながら食事を続けた。


すると、玄関の方から音がしたかと思えば、今しがた出ていったはずの茉里の姿がそこにあった。


「茉里!貴女は、ちゃんと食べたら持っていきなさい」


注意するお母さんに適当に返事をしながら茉里はあたしを凝視した。


「なに?」


お母さんがいる手前、何かを言われることはないが、内心ビクつきながら茉里の言葉を待つ。


茉里は、無表情のまま、ゆっくりと口を開いた。


「………お姉ちゃん、迎え来てるよ」


茉里もお母さんがいるから普通に話そうとするが棒読みだ。


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