恋ノ神

この関係から恋人まで発展させるのは骨が折れそうだ。
確かに、多少の無理は覚悟だったが。
晴に強く言い放たれたが、咲夜も負けじと言い返す。

「ここは公共だろうが。一人で使う所じゃねぇだろ。」

状況をよく読んで行動してくれ。
私は咲夜の言動に深く溜め息をつく。その時、晴は不機嫌そうに立ち上がり、図書館を出て行こうとする。

「あっ…」

さすがに彼もこの状況が読めたらしく、しまったという顔をする。
その声が聞こえたのか、晴が振り向く。

「何。」
「別に、出ろなんて言ってないだろ。」
「用が無いから出て行くんだよ。そっちは早く片付ければいいじゃんか。」

晴が冷たい言葉を放つ。
そう言うのも分からない事はないが、私にとってはそう言う風ではいけない。
このままではいけないと思い、急いで晴の近くに積み上げられてあった本の山を崩した。
こうして晴のほうに倒れそうになれば、咲夜は放っておけずに助けにくるだろう。
本はバランスを崩し、晴の方に倒れる。咲夜は思ったとおり、すぐに走り出して晴に覆いかぶさるようにして自分を上にする。

バサササッ

大量の本が咲夜と晴を埋め尽くす。
これでは呼吸が困難になるのではないかと心配になるが、どうやらそこまで深く埋まっていないようだ。
本の中を透かして見て見ると、咲夜が屋根になって晴には本の角などが当たっていない。
目を開けた晴が周りを見回す。
本に埋め尽くされたという状況を理解すると、晴は上を見る。
咲夜と目が合う。




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