恋ノ神
「五十嵐っ・・・お前、何やって・・・。」
「本が倒れてきたんだよ。危ねぇな。」
「何であたしに言うんだよ、本に言えよ。」
「本に言っても聞こえねぇだろ。」
この状況でも、2人は何かと焦る様子を見せない。
「悪ぃな、押し倒す感じになっちまった。」
悪戯のつもりで言ったのか、悪戯っぽく咲夜が笑う。
「押し倒す・・・?何言って・・・」
そう言いかけ、晴は自分の周りを見て言葉を失う。
押し倒す、と言う言葉は何気に恋愛の行為に思わせる。
たぶん、彼女もそう言う風に感じ取ったのだろう。
「ギャアアアア!!」
「うわっ!」
意外にも大声を出したので、咲夜も私も驚く。
「放れろ!放れろぉっ!」
「暴れんなって・・・あっ」
晴が暴れたせいで咲夜がバランスを崩し、本の重さで倒れこんだ。
本も意外と重かったらしく、咲夜ごと晴の上に倒れ、その振動で周りの本まで次々に倒れてくる。
「あちゃー」
私はその光景についあっけにとられて呟く。
ここまで酷くなるのなら、本を倒さなければ良かっただろうか。
後悔しかけるが、良い方に流れればこれもまた恋愛感情発展の近道イベントになるかもしれない。