恋ノ神
「痛・・・。」
「暴れんなっつったのに・・・」
晴が横を見ると、すぐ真横に咲夜の顔がある。
晴は感覚神経を尖らせ、今の状況を探ろうとした。
そして、彼女はようやく理解する。彼女の上に咲夜の体が倒れていることに。
「うわぁ!」
「今度は何だよ。」
「何だって・・・人に急接近しておいて・・・」
「・・・あ、本当だ。」
息苦しいさを見せることもなく、咲夜は余裕の表情でいる。
すると、晴にも分かったと思うが、本がずり落ちて来ている。
その流れに乗ってしまい、晴も身体が横を向いてしまう。
咲夜のほうを向いてしまった晴は、緊張気味のようで顔が強張っている。
咲夜も興奮しているようで、心拍数が上がっている。
―これは告白のチャンス!
咲夜に「フラれたら」という恐怖心があるなら、私がそれを消し去るのみだ。
本の間を通り抜け、咲夜の頭に手を入れ、ふられると言う恐怖心を取り除いた。
フワリと人魂のような青白い光が、彼の頭から出てくる。
咲夜の身体がビクンと跳ねる。こういう術を使うといつもそうなのだ。
「綾織・・・」
「何だよ。」
「俺が、お前の事好きって言ったら・・・どうする」
「殺す」
こういう甘い言葉に翻弄されない女も居るのだな、と私は勉強になった気分になる。
「ふざけた冗談はよせよ。いじめてた相手を好きになるなんて、有り得ないだろ。バッからしい。」
今のは咲夜も大分のダメージを喰らったな。
私は惜しそうに苦笑する。