恋ノ神
「冗談で言うけどよ、俺、顔は悪くない方だと思うぜ。」
「ナルシストか。モテるからって。」
モテる、と聞いて思い出した。
そういえば咲夜は顔はまあ悪くない方だったのだ。そして、私にはどこか見覚えのある顔だ。
「第一・・・五十嵐が主犯じゃ無かったとしても、主犯格でも、あたしはそいつら全員許さないからさ。」
「アレは・・・」
あれは?
私は尋ねるように言うが、聞こえないのは分かっている。
「姉貴を笑うならいい。けど、何であたしまであの時酷い目に遭わなきゃなんなかったんだよ。」
「酷いって、主犯の奴はお前何しても泣かなかったって・・・」
そう言ったとき、渾身の力で本をどかし、晴が起き上がる。
起き上がって一度うつむくと、強い顔つきで咲夜を見る。
「あたしがどんなに裏で泣いてたか分かるか!?」
泣き声の混じった晴の怒声が、静かな図書室響く。
彼女の目に、涙が溜まっている。
「都合良すぎだよ・・・」
それだけ言うと、晴は図書室のドアを開けて走り去っていった。
言うだけ言われた咲夜は呆然としている。
悲しむ様子は無かったが、それよりも呆然が勝っていたのだろう。
目を丸めてポカンとしていた。
「・・・そういうわけじゃ、無いんだけどな・・・。」
そう言うと、咲夜も図書室を出た。