恋ノ神

それはどういうことだ。

私はそう聞いてみたが、阿修羅は何食わぬ顔で首を傾げるだけだ。

「何がだよ。」
「さっき言っただろうが。『自分で言いやがって』ってさ。」
「言ってねぇよ」
「嘘付け。」

確かに聞こえたぞ。
そう付け足してやってもなを、阿修羅は首を振る。
確かに聞こえたはずだが、これ以上しつこく聞いても答えてくれそうに無いので、いったんその質問は辞めにした。

「そういえばさ、お前いつもならここでごろごろしてんのに、何で今日は外に出てんだよ。」
「仕事なんだって」
「忙しい奴だな。少しくらい息抜きしたらどうなんだよ。」
「うるさいな。お前だって戦争時代にはこんなもんだったろ」

そりゃそうだけど。
阿修羅は言うと、祠から持参してきたと見られるパンをかじる。

「っつうか、今回の担当は誰だよ。」
「この子。綾織 晴。」

そう言ってプロフィールを見せると、阿修羅は軽く「へぇ」と呟く。

「結構可愛いじゃねぇか。これなら恋の相手も楽勝で落とせるんじゃねぇの?」
「そのはずなんだが・・・なぁ。」

手こずっている訳を説明すると、阿修羅は胡座で座り頭を抱えるようにする。

「イジメで関係がうまくいってないわけか・・・。」
「ホントだよ。当の本人は反省してるみたいだが、晴のほうは許す気なんてさらさら無いわけだし・・・。」
「そりゃそうだろ。俺もその立場だったらそいつ殺してるからな。」

軽く言うんじゃねぇ。
突っ込むように私は言ってやった。






< 92 / 123 >

この作品をシェア

pagetop