恋ノ神
そう決めた私は、仏像の前で等身大のドアを描く。
目の前に現われたドアは、板は純白に光り、鍵穴が空のように光っている。
ドアノブを捻ると、柔らかい光が溢れ出した。
ハディスの時は黒い光だったが、クロノスの時はこういう光なのだ。
ドアを開くと、目の前に朝日のような太陽の光が純白の白い雲の間から差し込む。
私は、この光が好きだ。
柔らかい光を見ると心が安らぐ。
…しかし、私はその世界に住むクロノスは好きではない!
仕事は丁重であるものの、特に私に対する態度が大変気に食わない。
私は彼の上司というわけではないのだが、とにかく好いていない。
いつも無口で無愛想(特に私には)かつ上から目線だ。しかも顔が整っているため余計に悔しい。
雲のような煙の間を通り抜けると、大時計が見えてくる。
−来ちまったよ、ここに
立ち止まりそうになりつつも、強気に煙の間を通り抜けていく。
時計の前に辿り着くと、私は時計の前に座っている青年に目を向けた。
彼がクロノス。
白髪にも見えるが、不潔ではなく、この世界の光に照らされて銀髪にも見える。妖艶さを漂わす薄紅色の瞳は、ジロジロとこちらを見る。
太っていないが痩せてもいない、そしてかなり背が高い。(神の見方で、だ)
我々の世界では阿修羅に並ぶほどの美青年とも言われている。
「何だ。愛染明王か。」
「何だとは失礼な」
頭を掻きながらそう言う。
「今、暇か?」
「…暇だと言ったら、何かつまらん事に付き合わせるのか?」
「…半分当たりだ。」
何となく断られそうな気がする。クロノスは面倒臭いことが大嫌いなため、頼み事は十分注意して頼まなければならない。