恋ノ神

「今回は、お前の力を借りたい。協力してくれ。」

すがるかのように言うと、クロノスはふっと笑って言った。

「何だ。自分一人では何も出来ないのか?」
「!貴様ッ…」

文句を言おうと思うが、仕事の事を思いながら何とか口をつぐんで耐える。

「お前の『人の時を見る才』が無いと今回の仕事は完遂できないんだ。」
「・・・ああ、そうか。お前には時を見る才が授けられてないからな。」
「ああそうだよ。人をバカにしてる暇があったら早くしてくれ。」
「してくれ?」
「・・・してください・・・!」
「よし分かった。」

なんというドSだ。
苛々してくるが必死に耐えようとする。

「で、誰の時を見ればいいんだ。」
「コイツだよ。綾織 晴。」

プロフィールを見せると、クロノスはゆっくりと動いて時計の針を動かした。
彼の目の前に液晶テレビ状の形の煙が出現する。
これが時を映す煙。クロノスが合わせた人物とその者の時を映す事が出来る。
針は光の原色に分けられた物が『時間』『年』『月』と言うように分けられている。

「時はどこまで戻せばいい?」
「2010年の9月だ。」
「日にちは無設定でいいのか?」
「いい。」

そう言うと、クロノスは日にちを15日に設定し、針の中心を手のひらで軽く押す。
現代のセキュリティのように、持ち主の指紋が無いと使えないのである。
いや、これは科学の力では絶対に作れないのだが。



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