恋ノ神
―何だと
驚愕で私も晴も目を丸くした。
そんな中、宙人はケタケタと笑っている。
悲しみが悟られない為か、晴は声を絞り出した。
「それが・・・どうしたの?」
「あれ?悲しくないの?」
「全然、悲しく、ないよ。」
嘘だ、と私は思う。
彼女の精神がどんどんと削られていくのが分かった。
そんな時、宙人の心の声が聞こえる。
(あれー?やっぱ綾織が五十嵐の事好きってのはガセネタだったかな。まあいいや。どうせあの2人仲良かったし、このまま嘘付いて痛ぶろうっと。)
その享楽と歓喜の声を聞き、私は咲夜のときよりも激怒した。
怒りのボルテージが最高潮をも突き破り、爆発を起こす。
こんな相手がその場で痛めつけられないという悔しさが腹の中に湧き上がる。
黒い煙のような、ドス黒いもやもやが腹の中からくすぐって来るようで不快どころの話ではない。
「殺されてぇのかテメェは」
喚き散らす私を、クロノスは暴れ馬をなだめる様にして座らせる。
「何もお前が怒る必要性は無い。」
「許せねぇよこんな奴、こんな輩が今ものうのうと生きてるなんて信じられねぇ」
「お前は晴の親か」
「こんな人間殺しても、ゼウスは怒らねぇよな?」
「分からんぞ、子供は国の宝だからな。」
「あいつが死んだら、魂を痛めつけて死体はダキニテン(人の死体が好物の女神)にでもくれてやる。」
言っておけ、とでも言うようにクロノスは画面を消す。
「これ以上は多分何の情報も無いだろうし、何よりもお前が無駄にキレるだけだ。」
そう言うと、クロノスは針と標的を変える。
「誰にしてんだよ。」
「あ奴の言っていた五十嵐という奴の時だ。もしかすると、宙人は五十嵐にも何か吹き込んでいるかもしれない。」