あひるの仔に天使の羽根を
 
「え!? あ、ああ…じゃあ"彼の者"って?」


「蘇らせたい者だろうな、恐らくは。イクミ、そこのペン持ってきてくれ」


そして俺はイクミに指示して、サイドテーブルの上に見えるペンを持ってきてもらい、レグの紙の裏に生命の樹の簡易図を描く。


「生命の樹は、上から直ぐ下へ、そして右から左に流れるのが正しい順序だ。
セフィラにはその順序に沿って、番号が順に振られ意味を持っている」


"大いなる智慧と理解の最果てにある勝利と栄光の王冠は、美しき王国の礎となる"


「文を順になぞれば…"智慧"は2番目"コクマー"…つまりゲスト棟、"理解"は3番目"ビナー"…損傷しかけた須臾の棟、"勝利"は7番目"ネツァク"…信徒の街、"栄光"は8番目"ホド"…貧民窟、"王冠"は1番目"ケテル"…各務家、"美しき"は6番目"ティファレト"…レグの住まう一般街、"王国"は10番目"マルクト"…"混沌(カオス)"、最後は"イェソド"の"無知の森(アグノイア)"。

…4番目"ケセド"…"慈悲"を表す教会と、5番目"ゲブラー"…"峻厳"表す神父の寝所は、"ゲブラー"、"ケセド"の順にて先に入れるのが無難か」


「師匠から。"その順でいけば、寝所、教会、ゲスト棟、須臾の棟、信徒の街、貧民窟、各務、一般街、"混沌(カオス)"、"無知の森(アグノイア)"…移動に時間がかかりすぎて心配だ"だって」


確かに。


効率悪い移動の仕方だ。


だけど手分けをした処で、破壊出来る桜は1人だ。


遠坂とイクミに手伝って貰ったとしても、素人に魔方陣破壊は無謀な気がする。破壊が出来ないか、破壊に至る前に身体が異常を訴えるか。


少なくとも、闇に対してそれなりの耐久力と戦闘力がある…紫堂と無関係な人物がいなければ。


「居ないこともないけれど…」


そう呟いたのは遠坂で。


「だけど…一筋縄でいかないしな……」


誰のことを思い描いているのか。


俺にはある男が浮かんでいる。


「各務久遠……」


あの男の力は未知数だ。


もし、あの男が協力してくれるのなら。




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