あひるの仔に天使の羽根を
更に――
須臾がオレ達に手を出してから、双子の弟たる"久遠"は精神は、見る見る間に明らかに崩壊していった。
毎度囁かれる"久遠"という名前に、宴で埋め込まれた"永遠"を結びつけ、出口無き閉塞感を抱え込んだ弟は…突然、天使を貪るという奇行に走る。
オレ達が昔冒険して辿り着いた…羽根の生えた男女の棲まう場所。
そこに忍び入って、羽根を毟って喰らうようになった。
このままでは弟の"人間性"が完全に消滅してしまう。
だからオレは言った。
――今日から、オレが"久遠"。お前は"刹那"だ、いいな?
双子の見分けは誰にも出来ないから。
その時からオレは"久遠"になった。
弟を護る為に、オレは…弟を隔離して、その代わりに弟の分も…受け入れた。
全ての苦痛を。
だけどある時。
刹那の暴走を止められず…彼は"彼女"に手出しをしようとした。
水槽に入る前の"彼女"は、寝台に横たわり…チューブで繋がれていて。
その"彼女"に手を出そうとした刹那は、警報機の音により駆けつけた祖父の逆鱗を買って、その杖で胸を貫かれそうになった。
そんな時に助けてくれたのが、教育係の荏原で。
荏原は、オレ達の為に祖父を、後から現れた父も"始末"した。
そう…感謝したんだ、あの時は。
まさか…影でほくそ笑んでいるとは知らずして。