ご主人様はお医者様


ナースステーションに戻るとユキ先輩は眠剤を私に差し出した。



「これ希望でしょ!?」


「いいえ、飲んだらまた昼夜逆転しちゃいますし。いい考えがあるんです」



温枕(湯たんぽ)とアロマオイルを手にもう一度病室へ戻る。



「三沢さん、湯たんぽです。体を温めて少しマッサージしてみましょう?」


「いや、でも」


渋る三沢さんをベットに戻してアロマオイルで足と手を摩る。



「暫くここにいますから、目を閉じてみてください」


「……及川さん。君は高木先生が言っていた通りの看護師さんだね」


「高木先生が――?」


「ええ『今日は及川が夜勤なのできっと眠れますよ』って話していたんだ」


「そんなこと……」


「他の看護師さんは、すぐ薬をくれるんだよ。でも、君はそうじゃない。この歳になってこんなこと言えなかったけど、夜は不安で心細い。傍にいてくれるだけで安心なんだ。今夜は眠れそうだよ、ありがとう」


「三沢さん……ゆっくり休んでください」




そうだ、



先生は言ってたね。




『ハルが傍にいるとよく眠れる――俺が実証済みだ』




って――――……。



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