逢いたい夜は、涙星に君を想うから。


でも、矛盾した自分の気持ちなんて、なんの意味もない。



だって……橘くんは、最初からあたしのこと何とも思ってないんだから。



橘くんは優しいから、あたしをほっとけなかっただけ。



だからそばにいてくれた。



つらいとき、助けてくれた。支えてくれた。



『泣いていいんだよ』



震える小さな手を握りしめてくれた。



温かくて、安心する。



あたしにとって橘くんはそういう存在。



橘くんに話さなきゃいけないことをずっと言えなかったのは、



現実を見たくなかったんだと思う。



たぶん、矛盾した気持ちを抱えながらも心のどこかで、



このままずっと橘くんのそばにいたいっていう気持ちが強くなってた。



“橘なんか前より元気なくね?”



さっき聞いた男子たちの会話が頭の中で繰り返される。



“ひとりの時って、暗いっつーか、浮かない顔してること多い”

“暗いヤツと一緒にいると、こっちまで暗くなってくるもんなぁ”



やっと、現実を見る決心がついた。



夜に堕ちたあたしは

怖くて、不安で



彼の手を離したくなかった



できることなら

このまま彼の手を離さずに



暗い夜の中を

一緒に歩いて欲しかった



彼を道連れにしようとしてた



「あたしの……バカ……」



でも、そんなのはダメだ。



ちゃんと手を離さなきゃダメだ。



あたしのせいで、暗い顔になんてさせたくない。



「……ひっく……っく……」



こぼれる涙を手で何度も拭う。



あたしが大好きな橘くんの笑顔……曇らせてごめん。



橘くんには、笑っていて欲しい。



元気で、幸せでいて欲しい。



橘くん。



あたし行くね……。
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