逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
放課後、下校時刻のチャイムが鳴り、俺はクラスのやつらと正門近くの自転車置き場へ向かって歩いていた。
「帰りに、カラオケでも行く?」
「お、いいねー」
「橘?聞いてる?橘も行くっしょ?」
俺はその場に立ち止まった。
「ごめん!今日はパス!先に帰ってて」
俺は振り返って走っていく。
「どこ行くんだよー?橘ーっ」
後ろからくぼっちの声が聞こえて、俺は走ったまま振り返らずに大声で言った。
「教室に忘れ物ーっ」
「おー、わかったー!また明日なー!」
そう返事をしたくぼっちは、きっとわかってる。
俺が教室に忘れてきた物。
さっき俺たちが帰るとき、彼女はまだ教室にいたはず。
上履きに履き替えて、階段を駆け上がって。
夕日でオレンジ色の光が差し込む廊下を走っていく。
2年3組の教室が見えてきた。
開けっ放しの教室の後ろのドア。
黒板の前に立つ、彼女の後ろ姿が見えた。
「咲下っ」
教室の後ろのドアのところで、彼女の名前を呼んだ。