逢いたい夜は、涙星に君を想うから。


驚いた様子で振り返った咲下。



「た、橘くん!?」



教室には、咲下しか残っていなかった。



「か、帰ったんじゃなかったの?」



そう言って、咲下は黒板に背中をピタッと張り付けた。



「そんな驚いた顔しなくても……あ、黒板にラクガキでもしてた?」



「し、してないよっ!」



珍しく咲下がムキになってる。



なんか焦ってる?余計に気になるじゃん。



「なに書いてた?」



焦る咲下の様子を面白がる俺は、歩いて前の黒板に近づいていく。



すると、咲下の背中の後ろに、白いチョークで書かれた文字が少しだけ見えた。



「“ス”?」



「なんでもないからっ!」



そう大きな声で言った咲下は、慌てて手に持っていた黒板消しでラクガキを消した。



「ス、スイカだよ!その……えっと……そう!文字しりとりしてたのっ!ひとりで!」



「アハハッ!なんだよ、それ。文字しりとり?咲下って変わってんなぁ」



「よ、よく言われる……」



「じゃ、俺もまぜてよ」



「え?」



俺は水色のチョークを手にとり、絵を黒板に書いていく。



「文字しりとりじゃなくて、絵でしりとりやろーぜ?」



「橘くん……それはいいけど……」



「ん?なに?」



「ふふっ……なにそれぇ」



「え?どう見てもカメ。咲下の“スイカ”の続きだよ。“カメ”」



「これ、カメ?ふふふっ……」



咲下はその場にしゃがみこんで、顔を両手で覆って笑っている。



こんなに笑ってる咲下見るの、久しぶりな気がした。



俺はうれしくて思わず微笑んでしまう。
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