逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
「食欲ないんです。今朝作ってもらったお弁当も食べてません……お風呂入って寝ます」
「待ちなさい。話があるの。そこに座って」
なんの話……?
話なんかしたくないのに。
あたしは仕方なく食卓のイスに座った。
「ちゃんと聞いてね」
そう言って彼女は、あたしと向かい合って座る。
「この家で暮らすからには、守って欲しいことがあるの」
「……なんですか?」
「毎日朝7時にみんなで朝食。夜はお父さん仕事で遅いから。夕食は凜ちゃんとのえると私の3人で7時半に。それから、学校の日はお弁当を作るわ」
嫌だ……勝手に決めないでよ。
なんで一緒に食事しなきゃいけないの?
本当の家族でもないのに。
「それと、あなたの門限は夜7時」
「すいません、それは守れません。あたしバイトしたいんです」
「バイトは学校の規則で禁止されてるはずよ」
「でも……!」
なるべく、この家に居たくなかった。
「そんな暇があるなら、勉強しなさい。バイトしなくても、何か必要な物があるなら言って。それから、もし門限を過ぎる場合は、前もって必ず連絡すること」
あたしがうつむいて黙り込んでいると、彼女は強めの口調で言った。
「返事は?」
「……はい」
彼女はイスから立ち上がり、キッチンの方に歩いてく。
「いまからご飯用意するから、ちょっと待ってなさい」
「本当に今日は、いりませんから」
彼女は立ち止まり、あたしの方を向いた。
「あなた死にたいの?」
彼女は目を細めてあたしを見ていた。
「生きていく気があるなら、シッカリ食べなさい。それから食べ物を粗末にしないで」
「お弁当作って欲しいなんて、最初から頼んでません……」
「食べたくても食べられない人もいるのよ。あなたのお母さんみたいに病気になりたい?」
あたしは拳をぎゅっと握りしめる。
なんでそんなこと言うの……?
「それとも私が作る料理だから食べたくないの?」
やっぱりこの人なの……?
この人があの時、うちの家庭を壊した女なの……?
「言っとくけど、あなたのお母さんを捨てて、私を選んだのは、あなたのお父さんよ?」
やっぱりこの人だったんだ……。
お母さんとあたしが今までどんな思いで生きてきたか。
どれだけつらかったか。
「……うっ……っ」
吐きそう。
あたしは立ち上がり、口元を手で押さえ、慌ててトイレに駆け込んだ。
――ガチャ……。
「……おえっ……っ……ケホッ、ケホッ……」
気持ち悪い。
でも何も吐き出せなかった。
ただ、苦しくて。苦しくて……。
便器の前にしゃがみ込んでいると、あたしの背中をさすりに彼女はやってきた。
「……あたしに……触んないで……」
「そういう弱いところ、あなたのお母さんにそっくりね」
お母さんの悪口言うな……!
お母さんが病気になったのも、誰のせいだと思って……。
「……おえっ……うっ……」
苦しいよ……。
泣きたくないのに、涙が自然とこぼれてく。
「あなたはね、まだひとりじゃ生きていけないの。生意気な態度は、一人前になってからにして」
お母さん……。
どうしてお母さん……死んじゃったの……?
どうしてあたしを残して……。
「……うっ……ケホッ、ケホッ……」
助けて……。
誰か……助けて……。