逢いたい夜は、涙星に君を想うから。



「心の支え……。凜ちゃんにとって橘くんは、ほんまに大事な存在なんやね……?」



「つらいとき……助けてくれた人だから……」



悲しみに押し潰されて、立ち上がれそうにないあたしに。



手を差し伸べてくれた人だった。



「いままで、いろんなことあって……橘くんにあたしの想いを伝えるつもりはないけど、でも……」



顔を上げて、陽葵ちゃんの瞳を見つめて言った。



「……元気で、幸せでいて欲しいって思う」



もう二度と逢えなくても、かまわない。



ただ、笑っていて欲しい。



橘くんには、幸せでいて欲しい。



心の底から、そう思う。



「凜ちゃんの橘くんへの想いは、きっと恋やないんやね」



そう言って陽葵ちゃんは、優しく微笑んだ。



恋じゃ……ない……?



「凜ちゃんがつらいとき助けてくれたんやろ?いまも心の支えで、大切に想いすぎて……きっと恋やなくて、愛になったんやね」



あたしは首を少し傾げて、微笑む陽葵ちゃんを見つめる。



「恋は、好きやから相手に振り向いて欲しいとか……自分の気持ちがいちばん大切なんよ。やけど、愛はそうやない。相手のことをいちばん大切に想うことや」



陽葵ちゃんは、あたしに教えてくれた。



恋は……自分の幸せを求めるもの。



愛は……相手の幸せを願い、与えるもの。



恋と愛は別のものだと……。



「凜ちゃんは、彼を愛しとるんよ。そんなふうに思える人がおるんは素敵なことやと思う」



陽葵ちゃんの言葉に泣きそうになった。



あたしの恋は、いつからか愛に変わってた。



心の中で彼を想い続けるのも。



彼の幸せを願うことも。



決して、無意味なんかじゃない。



そう思える人に出逢えたことが、素敵なことだねって。



陽葵ちゃんは、あたしに言ってくれたんだ。
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