逢いたい夜は、涙星に君を想うから。


このノートを失くしたのは中学の頃だし。



橘くんとはまだ出逢ってないはず……。



このノートを橘くんがどこかで偶然拾ったの?



そんな偶然起きるわけないよね。



あたしこのノート、どこで落としたんだろう。



曖昧な中学の頃の記憶。



橘くんと出逢ったのは、高2の時……。



もしかして、どこかで逢ってた?



そんなわけないよね。



そんなわけ……。



「……ハッ」



あたしは驚いて口元を手で押さえた。



「もしかして……あのときの……?」



中1の終わり頃だったと思う。



道で、制服を着た同い年くらいの男の子と体がぶつかって……。



地面に倒れ込んだままの男の子に、あたしは手を差し出したんだ。



男の子は顔にケガもしていたし、あの男の子とぶつかったのは、あたしにとってかなり印象的な出来事だった。



ぶつかった衝撃で、あたしのカバンの中から教科書やノートも地面に落ちて……ノートもあのとき落としたに違いない。



いまの橘くんとは全然雰囲気が違うから、いままで気づかなかったけど……。



あのとき、ぶつかった男の子の顔……よく考えてみたら橘くんだったかもしれない。



哀しい瞳をした男の子だった――。
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