逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
夏祭り……か。
バカだな、俺。
こんなときでも、咲下のこと考えてる。
「……橘くん?」
吉野が首を傾げて、俺の顔を見つめる。
「あ、うん……ごめん」
「あれだよ?ほら、ふたりでじゃないよっ?クラスの何人かで行こうって話があるんだけど。橘くんも一緒に行かない?」
「ごめん、俺行けない……」
「誰かと約束してるの?もしかして……咲下さんと?」
「誰とも約束してないけど、でも俺……」
「じゃあ、もう一回考えてみて?夏休みまで時間あるんだし。返事は、いますぐじゃなくていいからっ」
「吉野……」
「ねっ?」
吉野の真剣な目に俺はため息をつく。
「……いつまでに返事すればいい?」
「やった!いつでも平気っ」
「わかった。じゃ……」
「うんっ!バイバーイ」
吉野は掴んでいた俺の腕を離して、俺に笑顔で手を振った。
教室を出て、俺はひとり廊下を歩いていく。
夏祭りには、たぶん行けない。
夏休みが始まったら、俺……
この街には……いないと思うから――。