逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
――――――……
夜の9時過ぎ。
俺は、自分の家のアパートのベランダから、星の見えない夜空を見上げていた。
“咲下が幸せなら俺も幸せ”
想いを断ち切るための、その言葉を。
何度も頭の中で言い聞かせても。
心が苦しかった。
誰かを想うのは、苦しいことのほうがずっと多い。
それでも人は、誰かを好きになる。
たとえ、叶わない恋だとしても――。
手のひらに乗せた、星砂のキーホルダーを見つめた。
いまも捨てられずにいる。
このキーホルダーも。
ふたりで過ごした時間も。
咲下への想いも。
――咲下。
もう逢えないキミの名前を。
あと何度……心の中で
俺は、呼ぶんだろう。
――ピリリリリ……。
パーカーのポケットの中で、ケータイが鳴っている。
着信画面に映った名前――。
“吉野 更紗”