逢いたい夜は、涙星に君を想うから。



俺は、砂浜の近くを探しまわった。



暗い夜道、歩いてる人はほとんどいない。



ここに咲下がいる……?



だとしたら、何でここに?



そんなわけない。



この星砂のキーホルダーだって、他の人のモノかもしれない。



だけど何で……咲下の声が聞こえるんだろう。



あの時と同じ胸騒ぎがする。



俺に助けてと言った……あの時と……。



俺は胸のあたりをぎゅっと強く掴んだ。



あの時……



前にトラックに轢かれそうになった咲下を助けた時……。



“大丈夫か?なにやってんだよっ!危ないだろ。死んだらどーすんだよっ”



“橘くん……助けて……。お母さんが死んじゃう……助けてっ……助けてぇ―――”



……あの時と同じだ。



咲下が危ない……そんな気がする。



見つけなきゃ。



もしも、いま……咲下がここにいるなら、



見つけ出さなきゃ……。



「ハァ、ハァ……」



だけど、海辺の近くを探しても、どこにも彼女の姿はなかった。



どこにいる……?



咲下……。



道の途中で立ち止まり、ふと目に入った場所……。



海辺よりもずっと、夜空の星に近い場所。


 
俺はそこに向かって走り出した。



その場所になぜ向かっているのか、自分でもわからない。



だけど……何かが。



心の中で何かが。



その場所へと導いていく。
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