逢いたい夜は、涙星に君を想うから。




左右を背の高い草木に囲まれた暗い遊歩道を走り抜けると、広い原っぱが広がる。



原っぱの上に立つと、そこから見える景色は果てしなく広がる夜空と海。



ここは高い崖の上。



遠く向こうに、崖の先のほうへ歩いていく人影が見える。



「ハァ、ハァ……」



暗くてハッキリとは見えないけれど、人が歩いていることには間違いなかった。



その後ろ姿に向かって、俺は必死に走っていく。



だんだんと近づいていくうちに、その後ろ姿は女の子だということがわかった。



あの背の高さ、髪の長さ。



歩き方。後ろ姿の雰囲気……。



「ハァ……咲下……?」



やっぱり間違いじゃなかった。



あの後ろ姿は……咲下だ。



どうして――?



どうして遠いこの場所に咲下がいる?



走っていく中、その疑問だけが頭の中で繰り返される。
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