逢いたい夜は、涙星に君を想うから。




俺は息を切らして走りながら、大きな声で叫んだ。



「咲下―――っ!」



彼女は振り向くこともなく、立ち止まることもなく、崖の先のほうへとゆっくり歩いていく。



様子がおかしい。



俺の声だって……きっと聞こえてるはずなのに……。



彼女は立ち止まらずに、ただ前だけを見て歩いていく。



「咲下……?」



なにを……考えてる?



まさか……違うよな……?



やめろよ……。



やめろ……っ!



「咲下っ……咲下ぁ―――!」



俺は必死に、彼女の後ろ姿を追いかけて走っていく。



早く……早く行かなきゃ……。



このままじゃ咲下が危ないっ……。



彼女は、崖の先で立ち止まった。



上を見上げた彼女。



何を見てる……?



いま、キミの瞳に映るものは何……?
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