水嫌いマーメイド

「あ、先輩達…来たよ」
『ホントだ……』
「あの事報告してくる」
『うん……分かった…』

あたし、またそっけなくなってきてるかも…。なんて分かりやすい体質に産まれてきたんだろ…。

「妃泉ィーー!!」

あたしに向けて、手を振る可耶の元気な声が聞こえてきた。……けど目の前に深田先輩がおぼつかない足取りで歩いていた。

『掴まって下さい』
「……ありがとう」
『荷物…持ちましょうか?』
「頼んでも良い?」
『もちろんです』

深田先輩のエナメルバックを肩に掛けて、一緒に歩いた。ただ、一緒に歩いてるだけなのに、疑問が出てきた。

あたしが断った枠は、誰が埋めてくれたんですか?

あたしが断った時、どうして直ぐに引き下がったんですか?

「妃泉ちゃん……私ね、昔から大事な時に、いつも怪我してしまうの」
『…そう…なんですか……』
「だから…ごめんね…」
『そんな…良いですよ!自分勝手に断ったんですから!』


それでも、深田先輩は続けて言った。


「家族みんなに言われちゃった……。その後輩が可哀想だ…って…」
『で、でも!!あたし…嬉しかったです!1年のあたしが、3年生に指名して貰えるだなんて』
「それでも、私も簡単に引き下がるなんてね…。エビでは、サメは釣れなかったみたい」


肩をすくめて、無邪気に先輩は笑った様に見えたけど、その笑顔は何処か暗がりに見えて、やっぱり本当は先輩は悔しいんだと思った。

それでも、こうやって話してくれる深田先輩は、優しい人なのか、嫌味なのか…あたしには解らなかった。


「妃泉ィーー!水沢が呼んでるよぉ~?」
『え?!あ、はーい!』
「私は大丈夫だから、行ってきて。荷物ありがとう」
『そんな…行けませんよ』
「良いの、水沢くんの事だからマネージャーの話じゃない?」
『…そうかも知れませんね…、すみません』


先輩は、すっきりした顔で、あたしを見送ってくれた。可耶…心地ない時に呼んでくれたのは、ナイスタイミングだけど…やっぱり、バットタイミングだったと思うな……。

『で、何なの?可耶』
「それは、水沢クンに聞いて?」
『……嘘ついてんの?絞めるよ?』
「お、怒ってるのかなぁ~妃泉ちゃん♪」

あー、我慢出来ない!
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