水嫌いマーメイド
「あー、今回もつらかった…」
『いつも笑うクセに』
「だって、佐々木おもしれぇもん」

……水沢の中にある、あたしのツボって何処まで浅いんだろう…?

と考えていた時、誰かにぶつかった。

「イタッ!」
『あっ、ごめんなさい!大丈夫…ですか……?』
「何してくれてんの?!」
「何の為に目が有ると思ってんのよ!!」

開口一番、遠回しに謝罪を求めるような定形文。

今朝のドーピングの2人組で、今のあたし達、如月高校水泳部が最も会いたくない人達。
ケンカ越しの言葉が出てきたけど、水沢の言葉で歯止めがかかった。


“洸仙に何言われても、反応するなよ”


しっ……しませんんん!!断じて!!

「あれ?朝の人じゃん」
「ホントだぁ~、マネージャーだったんだ?」

黒の水着をまとった、2人があたしの目の前に来て、指を指した。

「顔だけじゃなく、部活での役割も、…地味?」
「キャハハ!!ウケるぅ~」

浴びせかかる、あたしへの罵倒。

…………前言撤回は、まだ間に合うかな?…ヤバい右手が震えてきた……ッ!あと、一声で肩まで腕が上がる。

「………我慢しろよ」

あたしの異変に気が付いた水沢が小言で注意を促した。それでも、あたし達の小言の会話は続く。

『………ムリ……』
「……おいっ」
『……ダメ無理!!』
「ハァ……。分かった、考えがある」

……考え?
ぴたり、と構えた拳を元に戻した。

水沢の考えならどうにかなるかもしれない…!あたしの水沢への期待が高まる。

すっと、一歩前に出て重苦しい空気の中、水沢は言った。

「俺に免じて、絡まないでくれない?」

水沢が、お得意のアイドルスマイルを決めた。勝った!勝ったよ、水沢!勝利のゴングが聞こえて……

「さっき、あんなヒドイ事言って何エラソーに物言ってんだよ」
「しかも上から目線って、何様?俺様?」
「殿様じゃね?ちょんまげしてさ。あ、上様?」

こなかった………。

逆に、罵倒の声(主にあたしに向けて!)が大きくなるばかりで、状況は悪くなるばかりだった。水沢もこれには、白旗を挙げていた。

「てかさァ、ぶつかって謝罪の言葉も無し?」
「親にどんな教育されてきたんだよ!!」

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