ミルクティー
まさか海斗にからかわれていたなんて…

海斗は一枚上手だった。



「雛那ちゃんは嘘がつけない正直な子だね」

「もしかしてこの間一緒に帰った時の嘘も…」

「わかっていたよ」


海斗はそう言って優しく、頭を撫でてくれた。

頭にあった手が頬に触れ

そして



「雛那ちゃんは正直で頑張り屋さんで…それでキレイでいて、羨ましい」




海斗の瞳が私を見ている。



私は海斗の瞳からそらす事が出来ない。

声を出す事も、体を動かす事も





何もできない。





部屋には2人の呼吸と外から聞こえてくる子供たちの声だけが聞こえる。







遠慮がちに声を出す。


「かいと…」

「ん、どうした?」

「『キレイ』ってどうゆうこと?」

「純粋って事かな…

そろそろ帰ろうか、暗くなる前に」

「うん」





さっきまでの時間が嘘のようにいつもどうり送ってもらった。





目を反らす事が出来ない。

体を動かす事も出来ない。

海斗のあの瞳に見つめられたら――――…




私は何も出来なくなってしまう。


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