ネコ専務シリーズ
ロビーにいた社員たちは、

「ネコ専務の隠し子だって・・
 浮いた話ひとつ聞かない人だと思って
 いたら・・」

とささやきあったが、ネコ専務には全く
身に覚えがない。
この女の顔も、見るのは初めてなはずで
ある。

「あのー、お母さん、おそらく猫ちがい
 だと思いますよ?」

ネコ専務はそう言ったが、女は、いーえ、
間違いありません、顔も声も間違いあり
ません、私をバカにしないで下さいと
言い張る。

そこに通りかかった黒根社長が、

「ネコ専務くん、これは一体何の騒ぎ
 だね?」

と聞いてきたが、ネコ専務にもさっぱり
わけが分からない。

女はひとしきり騒いでいたが、ネコ専務
があまりにも動じず、ただ困惑して立っ
ているので、だんだん不安になり、

「あの、あなたの名前はーーですよね?」

と確かめてきた。するとネコ専務は、

「ああ、それは私のイトコの名前ですよ。
 昔はよく、私とそっくりだと親類中に
 言われていたイトコです。
 これで分かりました。お母さん、
 あなたはイトコと私を猫ちがいして
 いらっしゃる」

と答えて、ようやく合点がいったので
あった。
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