ネコ専務シリーズ
2時までのシェスタ(昼寝)の後、少し
は気が乗ってきたあなたは、いよいよ
仕事に手をつけようとするが、そこに
かかってきた国際電話は、デンマーク
支社の営業部長で、高校時代のクラス
メートでもある根来五郎(ねごろ・
ごろう)からである。

確か5年ぶりの会話なので、つい懐かし
く、1時間以上長電話してしまったあな
たは、受話器を置いた後も、高校時代の
思い出に浸って仕事する気にならず、
そのうち退社時間の5時が来る。

あなたは赤と黄色のストライプのソファ
からパッと立ち上がって、うう~んと
伸びをし、

「ああ、今日も夕日がきれいだなあ」

と、会社の高層階にある専務室の、西に
面した大きなガラス窓から、オレンジ色
の巨大な夕日をしばし見つめる。


あなたは「さーて、帰ろっかな」と、
一仕事終えたような顔をして晴れ晴れと
専務室を出る。

すれ違う部下たちが、

「専務、お疲れ様でした!」

と次々に挨拶するのに、

「うむ、お疲れ」

と返しながら、あなたは堂々と本社ビル
を出て、飼い猫の待つ家に帰るため、
浜松町駅に向かって悠然と歩いて行った
のであった。

             おしまい

< 220 / 439 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop