ネコ専務シリーズ
「シロ、今日はどこか出かけるのかい?」

とネコ専務は話しかけるが、2本足の
ネコと四つ足のネコは、もちろん言葉が
通じない。

それにネコ専務は、シロが普段どういう
ところに出かけているのか、まったく
知らないし、興味もない。

シロは例えば、近所にあるネコがたく
さんいる公園や、アーケード商店街の間
にある広場などによく行くのだが、
ネコ専務は下手をすると、近所にそんな
公園や広場があること自体、知らないの
ではないだろうか?



「行ってきまーす」

と手を振るネコ専務に、思わず抱きしめ
たくなるほど可愛い声でニャーンと応え
たシロは、飼い主が見えなくなると、
軽く水を飲み、トイレを済ませて、散歩
に出かけていった。

行き先は近所の商店街の中にある、
「ニコニコふれあい広場」
で、そのあたりにたむろしている野良猫
たち、ヴェリサウス、アルキダス、ノジ
マン、アリーナ、エリシアと遊ぶためだ。

その日一日を、ネコたちとサッカーに
興じたりして過ごしたシロは、夕方6時
前、自宅マンションに戻ってきたが、
その入口で帰ってきたネコ専務とバッ
タリ会った。ネコ専務は

「おお、シロ、帰ったか。
 今日の夕日はきれいだったろ」

と話しかけ、シロを腕に抱いて、14階
建てマンションの3Fの、東の端の方に
ある自分たちの部屋まで、エレベーター
を使わず階段を歩いて上がっていったの
であった。

             おしまい
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