ネコ専務シリーズ
ネコ住職と酔っ払い赤鬼
ある蒸し暑い真夏の夜。

浅草の寿司屋でたらふく寿司を食べて
きたネコ住職が、墨田区内の裏道を
上機嫌で歩いていると、その夜道の真ん
中に、巨大なシャムネコの赤鬼がひとり、
ズデンと座り込んで酒を飲んでいた!

酒はがぶがぶ飲んでいるが、なんだか
浮かない顔をして、どこか寂しげでも
ある。40代くらいに見える大男で
あった。

ネコ住職は目をパチクリさせたが、すぐ
に気を取り直す。
周りには他に人がいなかったので、ネコ
住職は、普通の人の目には見えないこの
赤鬼に、にこやかに話しかけることに
した。

「どうした、赤鬼さん。ずいぶんつまら
 なそうに酒を飲むじゃないか?
 何か面白くないことでもあったの
 かな?」

すると赤鬼は、

「なんだあんた、わしが見えるのか?
 ならば聞いてくれ。わしは先日、鬼の
 役所の課長昇進試験を受けたんだが、
 落ちたんだよ。
 これで3度目だ、それで腐ってるん
 だよ」

赤鬼にも役所や役職があることを初めて
知ったネコ住職は、興をそそられ、試し
に、君は役所の何課で勤務しているの
かねと尋ねたところ、都市計画局の公園
整備課だと答えた。

赤鬼は、あんたも一緒に飲んでくれと
言う。ネコ住職は、「わしの宗派では
酒を禁じているのじゃ」と断ったのだが、
すでに大分酔っ払っていたその赤鬼は、

「あんたが飲まなきゃ、わしは死んで
 やる!」

とムチャクチャを言い出した。

このためネコ住職は、これも鬼助けかと、
ちょっとだけ一緒に酒を飲んでやること
にしたのであった。



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