ネコ専務シリーズ
赤鬼が飲んでいたのは、「銘酒・鬼霧
(おにぎり)」という、強い日本酒。

道の真ん中から場所を移し、近くの小さ
な公園で、一方はちびりちびり、一方は
がぶがぶとそれを飲む2人は、すぐお互
いに、かなり気が合うことを発見した。

赤鬼がとつとつと話す鬼社会の話は、
ネコ住職にはとても面白く、また赤鬼の
話し方や態度は、一見乱暴なのだが、
かなり酔っ払っていても意外と礼節を
わきまえた、好感のもてるものだった。

「わしらが今いるこの公園も、なかなか
 良い公園だが、鬼の公園はこういう
 ものではないんだな。
 
 「血の池」を模した、赤い水が湧き
 出る噴水があるし、あっちこっちに
 トゲトゲがあるデザインなんだよ。
 
 ただ、このトゲで子鬼が怪我すると
 いって父兄がうるさくなってきたので、
 最近の公園はだんだんトゲがなくなっ
 てきてるんだが・・」

こんな調子で赤鬼はぽつぽつと現代の
鬼の世界について話してくれる。
酒をちびちびやりながら、それを楽しく
聞いていたネコ住職だったが、さすがに
朝の4時ともなると、もう帰らなくては
ならなくなった。

今は赤鬼も落ち着いてきたことであるし
と、安心してネコ住職は赤鬼と別れた
のだが、別れ際に、赤鬼に名刺をもらっ
たネコ住職は、そこで初めて知った赤鬼
の名前に、思わず笑ってしまった。
赤鬼の名前は「ひまわり」であった。


この日以来、赤鬼のひまわりは時々、
ネコ住職の寺に夜中こっそり遊びに来る
ようになった。

ただしその時は、もう酒は飲まず、ひま
わりが持参する真っ赤なお茶「大地獄茶」
を、2人ですすりながら歓談するのだと
のことである。

             おしまい
< 241 / 439 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop