ネコ専務シリーズ
「いやいや、それは違う。もちろん、
 被害者の高校生は逃がしてやらなくて
 はならないが、不良たちも正しい道
 へと戻してやるべきじゃ・・
 
 この世には、因果の法則というものが
 ある」


わかるかの? とネコ住職は澄んだ目で
社員たちを見た。もともと正座をして
いた3人だが、座布団の上で思わずさら
に姿勢を正す。


「善因善果、悪因悪果。善いことをすれ
 ば善いことが返ってくるし、悪いこと
 をすれば、最後には自分に悪いことが
 返ってくる。この世はそのようにでき
 でおるのじゃ。

 ここは、その金属バットで不良たちを
 死なない程度にボコボコにしてやり
 なさい。すると不良たちは、悪いこと
 をすればひどい目に会うんだなと
 分かって、正しい道へと立ち直るかも
 知れん。

 むろん、人を傷つけたからには、主人
 公は悟りからは遠ざかるかも知れぬが、
 しかし、5人ものネコが、それによっ
 てもしかしたら悟りへと向かうのかも
 知れんのだから、ここは、バットで
 ボコボコが正解なのじゃ」


仏教は難しいなあ、とつぶやきながら、
社員たちはせっせとメモを取る。

聞いていて、ホントかよ?と思う者も
いないではなかったが、ネコ住職はあの
戦国の名将・ネコ大名の子孫である。

一見穏やかそうなこの名僧だが、ネコ
住職は案外過激らしく、自分が正しいの
に悪人に黙ってやられてやれ、などと
いうヤワな思想は持ち合わせていないの
であった。


社員たちの質問は続き、ネコ住職は答え、
そうして夜は更けていく。

これは面白いゲームになりそうであった。

             おしまい





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