ネコ専務シリーズ

白ネコ姫

ネコ大名の一人娘である又旅(またたび)
の姫は、「白ネコ姫」と呼ばれている。

全身真っ白の、この上なく美しいメス
ネコであるが、そればかりではない。
又旅は今のネコ大名の統治になってから、
人々の教育に力を入れており、女子教育
も充実していたのだが、白ネコ姫はその
中でもトップの成績を収めた才媛なの
だった。

この美しくて賢い姫は、領民から大いに
愛されている。しかし本人は
「私は賢くて美しいのよ」
と思って自慢げなところがあり、そこを
父であるネコ大名は時々注意するのだが、
白ネコ姫は実際に、領内では並ぶ者が
ないほどの高い知性と教養を備えている
ので、なかなか心からは反省しないの
だった。

ある時、ネコ大名は用があって、京の都
に行くことになった。それについて行く
ことにした白ネコ姫は、初めて又旅の外
に出たのだが、その旅の途中で、小さな
握り飯を奪い合ってケンカをしている
子猫たちを見てショックを受けた。

又旅ではもう貧困がないので、白ネコ姫
は飢えというものを見たことがなかった。
白ネコ姫はネコ大名に、

「父上、父上、あの者たちは一体何を
 しているのですか?」

と聞き、

「彼らは貧しいので満足にご飯が食べ
 られないんだよ」

と教えられた。

すると、それに対して白ネコ姫が言った
ことは、

「変なの、ご飯がなければお菓子を食べ
 ればいいのに」、

これであった。



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