ネコ専務シリーズ
京の都に着くと、都の進んだ文化は姫を
すっかり魅了した。
又旅の主都もなかなか大きな町なのだが、
京の都はやはり歴史が違う。

姫は1ヶ月の滞在の間、あちこちを活発
に見て回り、たくさんの人と知り合った
が、その中でも特に仲良くなったのは、
他国の姫・寧功(ねいこう)であった。

寧功は姫の身でありながら、仏教の新宗
派・寧功宗の開祖となって、いま京の都
に教勢を広めつつある、実にエネルギッ
シュなメスネコである。

寧功は言った。

「白ネコ姫さん、私たち姫のような恵ま
 れたネコは、貧しいネコのためにその
 力を使った方がいいのですよ」

話を聞いているうちに、なんとなく
「そんなものかしら」と思えてきた
白ネコ姫は、寧功宗には入らなかった
ものの、寧功宗が運営している貧民の
ための学校の先生になろうと思った。

姫は平和な又旅では、その知性をもて
あまして退屈していたし、どうせ何か
するなら、困っているネコを助けること
をするのはなかなか悪くないと思った
からである。

その夜、姫がネコ大名にその話をすると、
ネコ大名は姫のその決心を喜んだ。
そしてあちこちに手を回して、姫が
何不自由なく教師に専念できる環境を
整えたのちに、又旅に帰って行った。



ネコ大名と白ネコ姫は、それから再び
会うことはなかった。

姫は教師仲間と結婚し、400年後、
その血筋からネコ専務が現れることに
なるのであるが、それは白ネコ姫には
知るすべのなかったことである。

             おしまい

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