ネコ専務シリーズ
ネコミミ山から見下ろす下界は、この上
なく美しい眺めであった。

よく晴れた日、輝く太陽と流れる雲の下、
広大な緑の平野とキラキラ光る湖や川、
そしてそのはるか向こうの、雲をいただ
いた山々の連なり、これらがいっぺんに
視界に収まっている。

今日は、これで最後ということで、ネコ
専務と長く話していても誰にも何も言わ
れなかったので、女王はネコ専務とたっ
ぷりと色々なことを話すことができた。


しかしそろそろ王宮に帰らなくてはなら
ない時間になり、女王は最後に

「ネコ専務、この国はどうでしたか?」

と聞いてみた。するとネコ専務は、

「実に自然と人情にあふれた、宝石の
 ような国でしたよ。何より、このよう
 な魅力的な、賢明かつ勇敢な美しい
 女王がいるのだから、私はそれだけ
 でもこの国に住みたいくらいですよ」

と答えた!



断っておくが、ネコ専務はまさか女王が
自分を好いているとは夢にも思っていな
いのである。
社交辞令でもあるが、しかしこれは、
ネコ専務の偽らぬ本心であって、単なる
お世辞でもなかった。

女王はこれを聞いて幸せいっぱいになり、
何と言ってよいのか分からないくらいに
なった。
しかし女王はすぐに態勢を立て直し、
礼儀にかなった別れの挨拶をして、ネコ
専務はその2日後、日本に帰って行った
のだった。



それから数年経つが、ニャンコロリン
女王とネコ専務はその後一度も会って
いない。
ネコ専務の方はと言えば、たまに友人
等に

「私は以前ヨーロッパの女王とちょっと
 仲良かったことがあるんだぞ」

などと能天気に自慢しているのであった。

             おしまい
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