カベの向こうの女の子
「意味ならあったよ」
そう声を出した俺も掠れていることがわかった
「春菜と知り合えただろ」
ずっとうつ向いてた春菜が、目をぱっとこっちに向けた
「え?」
俺は拳を強く握った
「俺、好きだったんだ。あの日、春菜が家に来る前から。春菜のことが」
春菜は俺を驚いたように見て、少しの間黙っていた
それから目を泳がせて、呟くように言った
「なんで…」
「そんな理由…、それだけ。最低だと思うだろ。なに考えてんだ、って馬鹿にしていいよ。でも俺、春菜を傷つけたくてしたわけじゃないんだ」
「でも、波くんは、愛ちゃんが…」
「あいつだって、俺が春菜を好きなの知ってるから」
春菜は瞳孔を震わせていた
「春菜がもう俺と関わりたくないなら、すぐ消える。連絡もとらない。ただ、俺は春菜が好きだっただけなんだよ。今も」
俺は全てを話していた
なにもかも今思ってることを、あまりにもストレートに
この気持ちを飾り立てる術がなかった