私の名前、知らないでしょ?

俺のこと

俺は当時37歳。4年前に妻と別れ、男やもめをかこっていた。職業は地方公務員。25歳で中部地方のA県の職員となった。
自分で言うのもなんだけど、基本的に俺はよく働く。高卒だったけど、上司に認められてエリートの集う部署に配属され、旧帝大や有名私大の法学部出身者に混じって頑張っていた。数年前までは。しかし、月200時間の残業が続いた上、離婚やら大怪我やらで精神的ダメージを被り、鬱を発症して、そのころも治療中だった。
医者は、休養をとれば直ぐに治る、と楽観的だったが、2ヶ月程の療養休暇を都合三回取ってみたが、状態は思わしくなかった。常に不安と恐怖と憂鬱な感情に脅かされ、仕事にまともに復帰できる目処もたたず、さらには、故障者扱いになり、係長程度の役職につくのも絶望的だった。一度は幹部候補のコースに乗りながら、今は厄介者扱い。深い挫折感で俺は酷く傷付いていた。そもそも組織のために身を粉にして働いた結果だと言うのに。
家にいてもやたら孤独だった。他人に認められ、愛されたかった。女性から愛されれば立ち直れるのでは?という、今考えれば本末転倒というか、大変な誤解をしてたんだが、俺はネットの広告で見掛けた「お見合いサイト」を利用し始めた。
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