初恋
階段を降りる音が聞こえた



背負っていたリュックと届けるはずのプリントを床に置いた



静かに櫻木先輩に近付くと、泣いていた



座っている先輩にふわりと抱き付くと、少しビクリとしてからまた泣き出した



首元に顔を埋めるとあの爽やかな香水の匂いがした



懐かしいなぁなんて思ったりして



ばいばい先輩に流れた私が馬鹿だった




先輩が振り返って抱き付いてきた



「夢斗と付き合ってんだろ?…抱き付くなんて、期待させるような事するなよ」



涙声でそう言われて
前より荒めの口調が私を締め付けた



私の涙のせいで先輩のコートに染みが出来た



「話聞いてたから、優しくするんだよね?…惨めじゃん、俺」



そう言いながらも先輩は腕に力を込めた




「私、先輩に彼女さんが出来たかと思って…やっぱりこんなんは嫌だったんだなぁとか思って、忘れようと思ったんです。でも逆に色々思い出しちゃって…」



同じように腕に力を込めれば、安心感があった



「ネックレス、ありがとうございます。ついこの間に思い出して、開けたんです。お手紙もありがとうございました」



耳元でそう言うと、ふふんと鼻で笑われた




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