君だけしか映らない
―――次の日。
笑美は昨日のように下駄箱で佐伯悠哉に会わないように、いつもより早く家を出た。
朝早くの学校はいつもより静かで新鮮だった。
部活で朝練をしている生徒がグラウンドを走っている。
体育館からはボールをつく音がする。
(なんか朝は穏やかでいいな…。)
そう思いながら教室に向かった。
―――ガラッ
(あれ…?)
教室には誰もいないだろうと思ったら、ひっそりと静かに勉強をしている男の子がいた。
「…おはよう。古賀くん」
笑美がそう声をかけると、彼は驚いたように顔を上げた。
「えっ?お、おはよう。委員長今日は早いね。」
「うん、早く目が覚めちゃって…。古賀くんはいつもこんな早くから学校にいるの?」
「うん、そうだよ。朝って静かで勉強がはかどるんだ」
「確かに朝の学校は静かでいいよね〜。でも偉いね。朝から勉強してるなんて、さすがだわ。」
「まぁ、勉強はやって損することはないし。」
笑顔で答える古賀に笑美は尊敬の眼差しを向けた。
(なんてプラス思考…!!)
古賀はクラスの男子の中でも目立たないタイプだ。だけど成績はいつも上位の方で、暇さえあれば勉強しているという感じだった。
あまり話したことはないけど、彼の持つ穏やかな雰囲気は笑美の心を落ち着かせた。