恋愛温度、上昇中!
あたしの視線を受け止めて、彰俊は困った様に笑った。そうやって、複雑に笑う顔も好きだったな、と思う。困った時、いつも、そんな顔をしたから。
「…そっか、すごい偶然」
彰俊は微笑む。
あたしの知らない、大人の顔で。
「…ねえ、あなた結婚するの?」
その質問に、彰俊は一瞬だけ表情を変えて
「紗織ちゃんは相変わらずストレートだよね」
と笑う。
「返事になってない」
「うん。結婚は、すると思う」
彰俊は学生時代の面影のない知らない顔を作る。
「そう」
あたしはそれを見届けて、口を閉ざす。
知っていた事なのに本人の口から聞けば、動揺、しないでもなくて。