恋愛温度、上昇中!
「紗織」
微妙な沈黙は低いあたしの名を呼ぶ声で途切れた。
なんで、今、
名前なんて、呼んだ事ないくせに。あたしの意識はそこに飛ぶ。
「あ、どうも」
彰俊は笑顔でその相手を迎える。初対面なのに感じの良い挨拶に、関谷は僅かに表情を変えた。
「…遅かったので、邪魔しましたね」
関谷の聞き慣れない敬語。それが上品に見えて悔しい。あの女集団からどうやって出てきたんだろう、なんて思った。
彰俊はあたしに微笑を送って
「紗織ちゃんには驚かされる!素敵な人だね?」
それはとても清々しく響いた。確実に勘違いしてる。
関谷も会釈で返すと、軽く手を上げてその場を去ろうとする彰俊。すれ違い様に、彰俊がからかうように向けた最後の一言が、また体温を上昇させた。