恋愛温度、上昇中!
存在感だけは半端ないものね。
関谷の瞳を思い出して、すぐ振り払う。あれは、凶器だ。光を閉じ込めたその夜色が真っ直ぐぶつけられると息苦しくなる。
もはやあいつ、人間じゃなくて悪魔なんじゃ。
そんな突拍子もない思考が頭を回った所で関谷が戻ってきた。
「…何、その不機嫌な顔?」
眉を寄せる関谷。気付けばあたしの眉間にもシワが寄っている気がする。
「は、早いわね」
今、席を立ったのに。それともあたしの思考回路が長すぎたのか。そうだったら嫌だ。
「ああ」
関谷は眉を僅かに上げて悪戯に微笑む。
だから、なんなの…
言い返したつもりの声は自分で思った以上に力なくて、関谷はまたクッと笑った。
「グラス、傾いてる」
「え?」
「汚すなよ、服。似合ってるから」
艶やかな視線から送られたその自然過ぎる言葉に、爆発しそうな心臓を抑えるのに苦労したのは仕方ない。