恋愛温度、上昇中!
結局、モヤモヤする胸の内に『車酔いする』と私が言った一言で、目についたこの場所、年甲斐もなく動物園に行く事になった。
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「…なんで俺を睨むんだ?」
「……」
フトアゴヒゲトカゲとかかれたそれは、カァと顎を黒くして口を広げて関谷を見つめている。……これは、だめだ。
「俺爬虫類だっけ?なんでこいつ目、逸らさねーの。愛しくなるわ」
「……」
やっぱり、だめだ。
トカゲと睨み合う関谷の光景がシュールで面白過ぎる。
「なあ、こいつ、変だよな?」
それ以上なにも喋らないで。
とうとう吹き出した私は、声をあげて笑ってしまった。
「ご、ごめ……」
関谷が驚いたように私を見る。さすがに笑いすぎたかな。
「いや、いい。つうか俺なんか面白いこと言った?」
「いえ、滅相もない、です」
「あ、そ」
関谷は、「じゃフトちゃんと友情も育んだし、そろそろ行くか」と歩きだす。
私はまたプッと吹き出した。
フトちゃんって……
「……すげーな」
関谷が、まじまじと私を見た。
な、なに?
「おまえの笑顔、すげー破壊力」
スッと楽しげに細まった関谷の目に、笑いの波は収まって、今度は違うなにかが駆け上がった。