少年少女リアル
 再び看板を持ち上げると、さっきの二倍重く感じた。足まで重い。

床に敷かれたフロアシートが爪先を引っ掛けようと邪魔をする。


「あっ……」

僕等に気付くと、向井さんは小さく声を上げた。困ったようにそわそわしているのが、視線を上げていなくとも分かる。

「その辺に置けばいいの?」

佳月がそう尋ねると、彼女は返事をしたが、それでもまだ落ち着かない様子だった。

僕は目を合わせる気もない。口も固く結び、返事すら出来ない気がする。

「凄いな、二人で持って来たの? ……わ、大丈夫?」

ぐらりと揺れた看板をその場にいた男が支えた。さっきから、いや、僕等が来るよりも前から、もう一人いたのだ。

「あ、すんません」

佳月が顔を上げると、いいえ、と微笑む。優しくて、吐き気のする笑顔。

先輩、加治原だ。


なぜ、ここにいるのか分からない。なぜこの二人が一緒にいるのか、もだ。

佳月以外の存在を如何に視界に入れずにやり過ごすか。その事で頭がいっぱいだ。今なら九九さえ間違え兼ねないほどだった。
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