少年少女リアル
 雨、と誰かが言ったのを耳で拾った。

貸出手続きを終え、ふと窓の外に目をやると、小雨がしとしと降っている。どうやらさっき降り始めたようだ。

今年は空梅雨らしく、雨の存在感があまり感じられなかった。
今朝の天気予報で、この雨は予想されていたから、もちろん知っていたけれど。

書架から分離スペースに戻ると、夏目さんは分厚い本から顔を上げた。

「ありがとう」

礼だけ告げると、僕の返事を聞かずに、また意識を本の世界へ戻す。よほど面白いのか。

「雨、降ってたよ」

えっ、と夏目さんは再び顔を上げた。

「また傘忘れた」

不貞腐れたのか、心底気怠そうに本を閉じる。
「また」の正確な意味は僕には分からなかった。

「天気予報でも言ってたのに」

「見るのも忘れた」

何だそりゃ。
不貞腐れているけれど、自分が悪いんじゃないか。
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