少年少女リアル
 きっとこの雨が上がれば梅雨明けだろう。
最後にひどい雷雨になって、それから、夏が来る。
もうそんな季節だ。


「傘入る?」

すかさず、駅まででよければ、と断りを入れる。

毎週会っているけれど、そういえば、夏目さんと一緒に帰った事は一度もない。
どこに住んでいるのか知らないし、いつも図書室で別れるから、そもそも駅まで行くのかどうかも不明だ。

「ううん、いいよ」

「家、近いの?」

一瞬躊躇って、夏目さんは似つかわしくない微笑を作った。むしろ、返って不気味である。

「まぁね。大丈夫だよ」

ほら。
やっぱり、この人は聡明だ。抜け目なく、こういった嘘を吐く。

見破っていても、僕がどうこう言う幕ではない。
彼女が大丈夫と言うのだから、大丈夫なのだと納得するしかない。

「私、夏休みの当番表もらってくる」

夏目さんは僕が座るのと入れ違いに、席を立った。
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