少年少女リアル
 僕と隣りにいる男の衣装は全く同じだった。厚着をさせられ、冴木の額にも汗が浮かんでいる。

「だって、二人は客引きだもん。機能面はどうだっていいじゃん」

……嫌な予感は的中だ。

「客引き? そんなの聞いてないけど」

「え? 本当?」

元橋さんは向井さんと顔を見合わせた。向井さんまで目を丸くしている。

「王路君が説得してくれるって言ってたんだけどな」

「佳月が? 聞いてないよ」

この様子だと、佳月の名前を出して誤魔化しているわけではなさそうだ。

「あらら……何かごめんね」

謝られても元橋さんが悪いわけじゃない。勝手に引き受けたであろう佳月が悪い。

「でも、もう曾根君に合わせて衣装も作っちゃったし、悪いけど、今更変えられないよ」

ごもっともな意見である。
僕の意思尊重は存在しないけれど、我が儘が通用する状況でもなさそうだ。


「客引きとか、向いてないと思うけど」

僕にそんな事が出来るとでも思っているのか。お世辞でもフレンドリーとは言えない性格だと自分でも思うくらいなのに。

「そんなの、大丈夫! 冴木君とセットだもん」

「は?」

「冴木君が客引きしてくれるから、それに付いていってくれたらいいの!」

「えぇっ、何だよそれー! 曾根も働け!」

冴木に小突かれ、断る言葉を失くしてしまった。

僕は今ここにいない佳月をひたすら呪った。
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